武蔵野稽古会傳 作法 細論 其之二

着装 二



袴の丈は、直立の状態で踝が裾に隠れる程度とされています。

あまり短いと足捌きの稽古にならず、長すぎると刀を持ったまま躓くなどして危険です。

柔術や合気系の流派では、師範、高段位の先生のみ袴を着用とする処もありますが、これは運足の秘事を隠すため、と聞いたことがあります。


余談ですが、袴を着ける際は左足より履くよう、師から教えられました。

理由を尋ねた処、決めておかないと同じ方に両足入れる慌て者がおるからナ、との事で何故左足からなのかは分からないままですが、小笠原流、伊勢流などの武家作法に基くものかもしれません。


袴紐の始末は所謂「結び切」にします。

武術的には江戸時代より、解け難い「結び切」か「一文字」が主流であったようです。


一般的によく見る「十文字」は結婚式の新郎など正装の結び方として普及していますが、一説に明治以降の貸衣装業者が、袴紐の傷むのを嫌って広めたという話もあります。


神前においては一文字、十文字等、現代のTPOに合わせるのも良しですが、常の稽古では結び切、要は固結びにし、余った紐は下の袴紐に絡め腰の後ろに始末します。

帯を締めない剣道などでは下の袴紐にぐるぐると巻き付けるだけのかたも多いようですが、角帯を締め、鞘を差す居合では頻繁に鞘を捌き、立ち居を繰り返すため、稽古を続けるうちに着付けが乱れがちです。

先述の、居合は左で抜き、左で切り、左で納めるという口伝があるとおり、鞘捌きも重要な技術となっており、帯の緩み、着装の乱れは業に影響します。

不肖としては着付けが出来るだけ乱れない工夫として、袴紐は捩れたよれよれの紐をぐるぐる絡めるのではなく、ぴんと伸ばして面と面がしっかり合わさるよう始末し、面の抵抗を大きくするよう心掛けています。

これは華にも茶にも造詣の深い兄弟子の薫陶「着装の乱れは心の乱れ」という言葉にも基いております。


本来、古傳における無雙直傳英信流とは常住坐臥、平常生活の中、突然の異常に対応する武術であり、単に刀を振り回すだけのものではなく、刀が無くとも煙草盆、文鎮、飲んでいるお茶、その時その場所で利用できる全てを遣い相手を制する、刀術、体術、心術を駆使する武術です。


神前、公の演武では乱れのない正装は礼儀のうちです。

しかし古傳の心持を受継ぐのであれば、たとえ常の稽古着であっても、着装は緩みの無いよう心掛けるべきと考えております。



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無雙直傳英信流 武蔵野稽古会

無雙直傳英信流 武蔵野稽古会は居合を本義とした古流武術 無雙直傳英信流を稽古する道場です

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