武蔵野稽古会傳 作法 細論 其之七

礼法 三


正坐の座し方


支度が整ったら、師範及び道場に対する座礼、神前の拝礼、刀礼の三礼を行います。

まず師範、道場への座礼を行います。


これは本来、師範に対する礼でもありますが、当会では仕事や家庭の都合で稽古開始時間に来られない人もいる為、稽古開始時間に間に合わなかった時は道場に対する礼として行います。


稽古に入るにはまず、正面の師範に対し正対するよう向きを調整して座します。

道場に対する礼の時は道場正面に祀る武神に正対して座します。

着座は直立の姿勢から爪先を動かさず、膝を割って腰を落とし、右手で袴の左裾を払い、次いで右裾を払い袴を捌き、左膝から床に着け、次に右膝を着きます。

腰を落とす際に背を丸めて俯くのは悪しとされ、背筋は伸ばし遠山の目付にて周囲を視野に入れつつ行います。

また裾払いの位置は膝より下で行います。

余談ですが、姿勢が辛いからといって高い位置で捌いていると、昔は金玉払いと揶揄されました。


爪先は床から動かさず膝を着き、両膝を着いたら爪先を伸ばし、踵に尻を載せます。

この時、足の親指を重ねる事という所作が各派に伝わっておりますが、左右どちらを上に重ねるかは道場ごとまちまちの様です。

なかには氣の巡り、陰陽を意識した理を以て上下を示している道場もあるようですが、清田泰山師から当会には伝わっておりません。

当会では、居合はより困難な体勢から抜くことで稽古になるという視点から、正坐之部一本目「前」で踏み出す右足が下になる様指導しています。


膝は「拳一つ半」と云われ、膝の間に握った拳が縦一つ、横一つ挟まる程度に開くとされています。

但し拳の大きさや足の太さ長さは人夫々なので、当会では拳一つ半の口伝を基準としたうえで、「膝の外の線が概ね肩幅」としています。

膝が閉じ過ぎていると横へ崩されやすく、開き過ぎは急所への守りが薄く、後への崩しに弱くなります。


手を置く位置は、太腿の中心線上に手の中指の付根を置き、心持ち手前に寄せ、指先は揃え若干内側へ向けます。

こうすることで脇に拳一つ分の余裕があり、手首の向きと指の向きに無理が無い自然体となります。

師からはこの姿勢について、たとえ刀が無くとも、いざとなれば相手の中心に手刀を突きこむ気持ちを込めるよう教えられました。

但しこちらの気を読まれては元も子もありませんので、新陰流に云う懸待表裏、気はいつでも掛かる心持で、表は悠々待つ構えとして、力んだりしないよう心掛けます。


姿勢について、口伝では「軽く顎を引き、舌を上顎に付け口を閉じ、つむじを糸で吊る」心持と伝えています。

これは居合のみならず殆どの武術で云われる正中線を立てること、脊椎を伸ばし中心軸を集中させる姿勢です。



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無雙直傳英信流 武蔵野稽古会

無雙直傳英信流 武蔵野稽古会は居合を本義とした古流武術 無雙直傳英信流を稽古する道場です

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